2021年6月16日水曜日
世界へ
長引くコロナ禍。行動を制限され、行きたいところに行けない今だけど、だからこそ自由に行き来できた頃のことが貴重でいとおしく感じる。
私の人生の原点となったと思えるのは、大学時代に行ったタイ。タイを含め、カンボジアやラオスなどの支援活動をしているシャンティ国際ボランティア会のスタディツアーに参加した。
この会はタイの農村で、図書館活動や奨学金支給など子どもたちへ教育支援を行っている。その村を訪れ、数日間ホームステイをした。
一緒に行った日本人の仲間とも別れ、一人一家庭にホームステイ。ドキドキの私を迎えてくれた中学生の女の子は、しっかりと私の手を握った。タイ語はわからないけど、その手の力強さで、大丈夫、と思えた。
着いた家は、薄い板で囲まれたような小屋。お世辞にも立派な家ではないし物も必要最低限の物しかない。でも、いつも私の手をしっかり握ってくれて、こっち、と引っ張ってくれて、とにかく安心感があった。家族数世帯がいつも一緒にいた。近くの市場に一緒に行き、その日の食事を買ってくれた。とてもありがたかった。たぶん、おいしい?と何度も聞いて気づかってくれた。とてもおいしかった。
学校にも一緒に行った。舗装されていない土の道を、自転車の荷台に乗せてくれて二人乗り。学校では日本からの珍しい来客に、教室の子どもたちは目をキラキラさせた。私のたどたどしい英語で、日本の紹介をした。内容もことばも恥ずかしいほどなっていないのに、みんな本当に目をキラキラさせて、話を聞いてくれた。休み時間にはみんな集まってきて、おりがみで盛り上がった。
ほんの数日の滞在だったが、大学生の私はその時まで感じたことがないくらい、タイの人々からやさしさとあたたかさを感じていた。そして「豊かさとはなにか」ということを、このとき強く考えた。日本は経済的には確かに豊かになっている。でも、心の豊かさでは、タイのあの子供たちに完全に負けていた。
あの経験からもう…30年近く経った。やっぱり心の豊かさでは負けてる気がするな…これからも迷いながら求めながら生きていくのだろう。
日本の子どもたちには、視野を広く持ってほしい。物事を違う視点から見ると、なにが「いい」かということが違って見える。
コロナ禍で世界に行くことをあきらめたり躊躇したり、チャンスがなくなっている人がいるだろう。でも、行きたいという思いは持っていてほしい。きっとあなたの人生を豊かにしてくれる。
担当:1年2組担任