2022年3月4日金曜日
ある中学生3年生の入試の話
ある中学生T君は、反抗期に入り中学2年生のときに担任の先生と衝突。学校で何度も指導を受けていた。保護者にも話が入り、家で叱られてもいた。
3年生になり、担任の先生は活気あふれる男の先生になった。しかも極真空手の有段者で、青年海外協力隊として、海外に極真空手を指導にいった経験のある先生。当たり前のように在籍した3年1組には、やんちゃ過ぎる男子生徒が集まっていた。
11月になったとき、担任の先生から「県立高校の推薦入試(当時)を希望する生徒は、まず申し出るように」と言われた。兄も姉も推薦入試で県立高校へ進学したTは一目散に先生のところへ行き、「推薦受けたいです。」と伝えた。
担任の先生からは、「お前はだめだ」の一言。即、却下された。
「服装などの生活面がだらしない生徒は推薦できない。正しい服装をして伝えにきなさい。」
学ランをだらしなく着ていたのだから、言われても当たり前だった。しかし、当時の自分はその言葉に反感を持ったりもした。
1月、私立高校の入試結果が出て県立一般選抜で受験する高校を決定する時期になった。
とても悩んだ。受験する高校は決まっていたが、普通科にするか数理科学科にするか、受験する学科が決めきれなかった。当時から数学が好きで、数学の勉強をしているときは時間を忘れてしまうことがよくあったが、理科に自信がなかった。(ちなみに中3の時に理科を教わったのは、本校にいらっしゃる先生でした。)
悩みに悩み、三者面談をお願いした。面談の場で担任の先生は「Tは受験勉強をほんとうによく頑張ってきた。そのことはよくわかる。夏休みからの伸びはすごい。数理科学科は数学の点数が1.5倍になるが、(数学担当の)M先生も、君なら大丈夫だろうと言ってくれて、応援してくれている。チャレンジしてもいいんじゃないか。」
自分の努力をみてくれて、自信を与えてくれたこの言葉にどれだけ励まされたかはわからない。チャレンジすることをすぐ決めた。
試験当日、緊張からお腹を壊した。国語の時間は20分ほど、トイレにこもってしまった。でも、焦りはなかった。
「お前なら大丈夫だ」
担任の先生の一言が励みになり、その後も開き直って試験を受けることができた。
結果は合格。ただ嬉しかった。
5年後
成人式で担任の先生と顔を合わせた。自分が何とか大学の教育学部に進学できたことを報告すると、とても喜んでくれた。そして当時受験する学科で悩んでいたことや推薦入試を受けたい希望を即、却下したことも覚えてくれていた。
「あのとき、推薦をその場でだめと言ったのは、君の成績がどんどん伸びてきて3月の最後まで頑張ったほうがよいと思ったから。確かにだらしないところはあったけど、一般のほうが高校生活に繋がると考えたからだよ」と教えてくれた。
5年たって当時の気持ちを教えてくれたこと、そして高校生活も見通して進路指導してくれたことに感謝するばかりであった。
そのT君は、今、中学校の教員となり、3年生を担任している。
そして、現在教え子たちの一般選抜入試と卒業式を目の前に控えている…
3年生のみなさんへ。
いよいよ一般選抜です。試験には必ず2通りの結果が出ます。定員があるのですから仕方ありません。
しかし、進学先が第一志望でなかったとしても、その高校が自分に合わない高校だとは言い切れません。
もしかしたら、第一志望の高校より合っているかもしれませんよ。それはあなた方ひとりひとりがどのように高校生活3年間を過ごすか、だと思います。
一番大切なことは、「自分の将来を真剣に考え、そのための進路先を選択し、実現のために努力した。」という過程だと思います。
「喜びと感謝と敬いの心をもって」胸を張って、試験に挑んできてください。
さて次は、素敵な3年生をしっかり育ててきてくれた3年主任の登場です。お楽しみに。